「ちめんかのや」とは、「地面下の家」。
保存樹木のクスノキをはじめ、敷地外周を囲む小さな森をくぐり玄関を入ればそこは異空間。誘われるように階段を下っていくと、この家の重心である地面下に到着します。

「玄関ホール」とされる入口の部屋は、正面のトップライトから降る木漏れ日が水甕の水面でゆらゆらゆらぎ、やわらかな曲面の壁も相まって、まるで洞窟住居の趣です。階段室を挟んだキッチンダイニングスペースはカウンターがぴったり納まる細長い吹き抜け空間で、続きの部屋ながら少し気分が変わります。これら地面下の空間では、映画鑑賞をしたり、ボードゲームをしたり、良い音で音楽をかけて本を読んだり、ここは、ひとりでも・家族でも・大人数でも、大人のあそび心が掻き立てられるようです。

地下からふたたび階段を上へ上へといけば、突如明るく広々したヴォールト天井のアトリエ空間があらわれ、楕円の窓からは、クスノキの枝葉が間近に感じられます。2Fのこの部屋に行くためにも地下の暗がりを経由することで、この明るい空間がいっそう引き立ちます。

これほどにドラマチックな建築ですが、もともと家族のための住宅として建てられたもので、その後バーや展示、演劇公演にも使用されてきました。道路面よりも少し高い1F個室の仕切りだけ、途中で取りはらわれていますが、それ以外はほぼ建築時のつくりのままです。

かつて集っていたファンも多い「ちめんかのや」。建築家の齊藤裕さんが設計し、売主が味わいを深めてきた、素敵なヴィンテージ住宅です。
経年なりに、いくつかの修繕が必要になりますが、唯一無二のこの場と空間を引き継いでくださる方を、心よりお待ちしています。

ちめんかのやHP